「われとともに老いよ、楽しみはこの先にあり」を読む

 「M★A★S★H」という映画をご存じだろうか。館主はアメリカ出張中、テレビでよくこのブラックコメディーを観ていた。確かシリーズものだったと記憶する。この本を読んだら、もともとは1970年に作られた映画だという。そんな昔になってしまったのか。映画で使われたあの奇妙な曲(suicide is painless?)を今でも覚えている。
 背景を知らずに、この本は読めない。第二次世界大戦後始まった米ソ冷戦時代のアメリカで、赤狩りの標的の一人とされた人物の自伝。ハリウッドの脚本家。ハリウッドというと今の日本人には華やかな印象しか無いと思うが、アメリカの汚点とも言えるこのヒステリー現象は、知る人ぞ知る事実。
 この本の邦題は相当強引な意訳に違いない。以下法廷でのつるし上げ場面の引用をまず読む必要がある。:

 「誰だって胸を張って答えるだろう。真のアメリカ人であれば胸を張って答えることのできる質問だ。君は現在共産党員なのか、あるいは過去において共産党員であったのか?」
 「胸を張って答えられるかどうかは周囲の事情によります」私は彼を見て言った。「答えようと思えば答えられるでしょう。でも、答えてしまえば、あとで自分がイヤになる」
 この一言でトーマスの我慢は限度を超えた。「退廷を命じる!」

 原題はその時の言葉、I’d Hate Myselfから来ているそうだ。もっとも著者はこのタイトルを本の中で使っているので、翻訳者があえてタイトルを差し替えた理由も分からないでもない。

われとともに老いよ、楽しみはこの先にあり―リング・ラードナー・ジュニア自伝、リング・ラードナー・ジュニア、清流出版、より

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