リングが同業者トランボを描写する筆は独特だ。普通世間では、こんな人物とはつきあえないだろう。でも著者はあくまで柔らかい。
ごくまれにこういう人物に出くわす。人間としての美点が誰の目にも明らかで、人を捉えて放さぬ包容力があり、自分のことはそっちのけで相手を気遣い、その円満な生活ぶりはまわりの尊敬と愛情を集めずにはおかない、というような人物にである。ドルトン・トランボこそは、間違ってもそういう人物ではなかった。
確信的な屋内派であるトランボは、右手にペン、左手にタバコを持って、バスタブに浸ってシナリオを書くのを好んだ。彼にとっての暇つぶしは論争で、相手が友人であれ赤の他人であれ、手紙であれば多量の便箋に持論を展開して倦むことを知らず、面と向かっての議論であれば、ひとたびトランボが喋りだせば、奔流のごときその勢いに当人同様相手も巻きこまれて時間の経つのを忘れてしまうのだった。
ところで、トランボは、著者同様赤狩りに巻きこまれたが、あの「栄光への脱出」「パピヨン」の脚本、「ジョニーは戦場に行った」の監督で名を残した。
われとともに老いよ、楽しみはこの先にあり―リング・ラードナー・ジュニア自伝

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