裏日本随一のフランス料理店を作った男、その光と影

 先月読み終えた本「世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか」からの引用。

 志ん朝は、ひいき筋の計らいで毎年フランスを訪ね、本場のフランス料理を食べるのを楽しみにしていた。フランス料理通を持って自ら任じていたのだが、まさかこれほどレベルの高いフランス料理に東北の地方都市で出会えるとは、思ってもみなかったのである。
 そして支払の段になって、もう一度仰天する。志ん朝がこの料理と飲み物ならこの値段と予想した金額の、三分の一にも満たなかったからだ。
「えっ、そんなわけないでしょ。こんなにご馳走を食べて、こんなに飲んでるんだから」

やがて破綻に向かうところが、何ともやるせない。

 「芸術家としてではなく、利益を生む支配人として経営をみてくれ」
 しかし久一は、そう言われれば言われるほど、利益を上げることより、赤字を膨らませても日本一のレストランと言われ続けることに執念を燃やした。

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